STTG工法の概要
【概要】
地下トンネル、地下ピットよう壁などのコンクリート構造物打設継ぎ目、クラックからの漏水を止水する工法であり、硬化時間を適度に早め、大量の漏水箇所の止水が可能、また、長期耐久性に優れた工法である、これにより、施工後の長期耐久性を有する。
【特長】
- 伸び、付着強度などに優れる石油樹脂・アクリル系材料を主材としているため、地震などにより躯体に変位が生じても目地の開きに追随できる。
- 吸水性ウレタンプレポリマーを含有する硬化促進剤を注入直前に撹拌混合し、その吸水効果により主材の硬化時間を画期的に早め、多量の漏水でも止水できる。
- 設備の延命化が可能となり、維持管理コストの削減をはかれる。
従来工法とSTTG工法のひび割れ箇所の相違は以下の通りである
【要求性能】
項目 | 要求性能 | 備考 |
ゲルタイム | 5分~20分 | 漏水源に十分に生き渡った後、確実に止水する時間 |
材料の伸び | 200%以上 | 例:1㎜の隙間が3㎜になっても追随する |
引張強度 | 0.5N/㎜²以上 | 水探50mの水圧に耐える |
付着強度 | 付着強度≧引張強度 | 材料が破断しても付着している |
材料の物性、性状
主材 | 硬化促進剤 | ||
アルファー・ゾル-STTG | アルファー・ゾル-ゲル化剤 | ||
外観 | 白色液体 | 淡黄色液体 | 褐色液体 |
主成分 | 石油樹脂 アクリル樹脂 高分子アルコール |
水溶性ポリイソシネート | ウレタンプレポリマー ポリイソシネート |
【経年変化に伴う漏水】
周辺地盤の不等沈下、温度変化に伴う繰り返し伸縮、地震による変位、材料の劣化などにより、コンクリート打継ぎ目の目開き、目地材の劣化、新たなコンクリート亀裂の発生などがあり、これにより漏水が発生する。
【コンクリートクラックからの漏水】
地震、地盤沈下、施工不良などにより地下鉄筋コンクリート構造物にクラックが発生し、これに伴い漏水するケースが見られる。
【打継ぎ目からの漏水】
大規模な構造物では、一度に大量のコンクリートを打設することが出来ないため、構造物には打継ぎ目が生じ、一律化の不足や止水板などによる構造上の弱点が発生する。 また、躯体温度の変化に伴うコンクリートの伸縮や地震等の地盤変位により目開きが発生し、地下水が流入する場合がある。
【漏水に伴う周辺への影響】
- 構造物への漏水に伴う地盤沈下 地下水の水位が低下することにより、地盤の圧密現象等が発生し、特に粘性土では地盤沈下が発生する。
- 構造物への土砂流入による路面陥没洞道内に地下水や土砂が流入することで、地盤内に空洞が発生し、 路面陥没に繋がる。
- 前述の構造物の劣化を放置すると、構造物の耐力を低下させ、大規模補修や設備の更新を余儀なくされる。
- 構造物周辺の地盤や建物などに影響を与える場合がある。
【コンクリートへの影響例】
- クラック、コンクリートの中性化、 施工不良による鉄筋被りの不足などにより、塩分や水分などがコンクリート内に侵入し、鉄筋に錆が発生する。
- 鉄筋に錆が発生すると体積膨張が 起こりコンクリート内が圧迫され ひび割れが発生する。
- ひび割れが発生するとコンクリート内に侵入する水や塩分の量が多くなり、鉄筋の錆が発生し、コンクリートのひび割れが拡大する。 そして、鉄筋の体積膨張やコンクリートのひび割れの拡大が進むと、コンクリー ト内の膨張した鉄筋にコンクリートが押し出され浮きが発生したり、コン クリートの表面剥離が進行する。
【伸び性能】
温度変化や地震等によりクラックに変位が生じた場合でも、材料が追随できることが必要である。 そこで、塗膜系建築屋上防水材と同等の伸びを有することを要求性能とし、破断時の伸び率を200%以上とした。 破断時の伸び率200%とは、幅1㎜のクラックが補修後に地震等で幅3㎜まで拡大した場合でも、材料が追随できる性能である。
【引張強度】
地下構造物の大半は、地下50m以内に位置していることから、 水深50m以上の水圧に耐えられることを想定し、0.5N/mm2以上の引張強度とした。
【付着強度】
コンクリートと止水材の付着は、変位により材料が伸びて破断するよりも強く付着していれば、引張強度が有効に発揮できることから、付着強度200%以上≧引張強度を要求性能に設定した。
混合率 | 試験体 温度 | 付着強度N/㎜² | 引張強度N/㎜² | 性能付着強度≧引張強度 |
15% | 30℃ | 1.26 | 1.06 | OK |
20℃ | 1.09 | 0.97 | OK | |
10℃ | 0.93 | 0.79 | OK | |
10% | 30℃ | 1.07 | 0.77 | OK |
20℃ | 0.89 | 0.85 | OK | |
10℃ | 1.03 | 0.83 | OK | |
5% | 30℃ | 0.9 | 0.73 | OK |
20℃ | 0.84 | 0.75 | OK | |
10℃ | 0.82 | 0.73 | OK |
【ゲルタイム(材料硬化時間)】
ゲルタイムは単に短いだけでなく、止水材が漏水の原因となっているクラックに行きわたるまでは流動性を保ち、行きわたった後に速やかに硬化するよう、適切なゲルタイムを有することが望ましいと考えられる。したがって、クラックに行きわたるまでに必要な時間や作業効率や材料のロス分の削減等を勘案し、ゲルタイムの要求性能は5分以上20分以内に設定した。
【要求性能のまとめ】
項目 | 要求性能 | 備考 |
ゲルタイム | 5分~20分 | 漏水源に十分に生き渡った後、確実に止水する時間 |
材料の伸び | 200%以上 | 例:1㎜の隙間が3㎜になっても追随する |
引張強度 | 0.5N/㎜²以上 | 水探50m以上の水圧に耐える |
付着強度 | 付着強度≧引張強度 | 材料が破断してもコンクリートと材料が付着している |
【試験装置概要】
実際の注入装置を用いて模擬注入を行った。アクリル板とコンクリートの隙間(1㎜)に注入を行いその硬化様態、隙間の中での材料の広がり等の確認を行った。硬化促進剤の吐出量が主材の吐出量の8%(重量比)となるようポンプ吐出量を制御して注入した。別経路で隙間に水も注入し漏水状態を再現した。
【試験状況】
概要の条件で試験した結果、水を押しのけて拡散し、徐々にゲル化する様子が確認された。注入ノズルから混合液を採取しゲルタイムを測定した結果12分であった。
試験より1ヵ月後にアクリル板を引き剥がし硬化体の性状を確認した。この結果、隙間や材料やせは発生しておらず、均質な硬化体が形成されていることを確認した。また、十分な伸び、付着を有していることも確認した。
【試験結果のまとめ】
混合率を8%とした模擬試験により、施工時の拡散性、ゲルタイム、硬化後の材料特性に問題がないことを確認した。 以上の結果から、硬化促進剤混合率は5%から10%にて施工すれば良いと考えられる。しかし、材料温度の低下が懸念される場合は、ゲルタイムが要求を満たさなくなることが示されたため、硬化促進剤を5%より多くするか、材料の温度を10℃より高くすることを検討する必要がある。
【硬化プロセス】
アルファー・ゾルは石油樹脂ポリマーとアクリル樹脂ポリマーを高分子アルコール(ポリビニルアルコール)により乳化した水性エマルジョン分散液である。
吸水性ウレタンプレポリマーは周囲に水ポリが存在すると、これを急速に吸収して、炭酸ガスを放出しながら重合し、ウレタンになる。 アルファー・ゾルと吸水性ウレタンプレポリマーを混合すると、アルフ ァー・ゾルの水分は吸水性ウレタンプレポリマーの反応により急速に吸い取られ、脱水、濃縮されて、石油樹脂アクリル樹脂ポリマー粒子同士が密着融合し流動性のないゲル化状態になり固化する。この吸水性ウレタンプレポリマーとしてOH-1Xを使用している。
【STTG材を浸析させた水の水質分析の結果】
分析項目 | 試験結果 |
水素イオン濃度 | 異常なし |
生物化学的酸素要求量 | 異常なし |
n-ヘキサン抽出物質含有量 | 異常なし |
窒素含有量 | 異常なし |
よう素消費量 | 異常なし |
外観(色調) | 無色透明 |
外観(濁り) | 濁り無 |
カドミウム及びその化合物 | 異常なし |
鉛及びその化合物 | 異常なし |
六価クロム化合物 | 異常なし |
砒素及びその化合物異 | 異常なし |
水銀及びアルキル水銀 その他の水銀化合物 |
異常なし |
ほう素およびその化合物 | 異常なし |
カドミウム及びその化合物 | 検出されない |
分析項目 | 試験結果 |
水銀及びその化合物 | 検出されない |
セレン及びその化合物 | 検出されない |
鉛及びその化合物 | 検出されない |
ヒ素及びその化合物 | 検出されない |
六価クロム化合物 | 検出されない |
シアン化物イオン及び塩化シアン | 検出されない |
硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素 | 異常なし |
フッ素及びその化合物 | 検出されない |
ホウ素及びその化合物 | 検出されない |
四塩化炭素 | 検出されない |
1.4-ジオキサン | 検出されない |
1.2-ジクロロエタン | 検出されない |
シス1,2-ジクロロエチレン及び トランスシス1,2-ジクロロエチレン |
検出されない |
分析項目 | 試験結果 |
ジクロロメタン | 検出されない |
テトラクロロエチレン | 検出されない |
トリクロロエチレン | 検出されない |
ベンゼン | 検出されない |
ホルムアルデヒド | 検出されない |
亜鉛及びその化合物 | 検出されない |
アルミニウム及びその化合物 | 検出されない |
鉄及びその化合物 | 検出されない |
銅及びその化合物 | 検出されない |
ナトリウム及びその化合物 | 検出されない |
マンガン及びその化合物 | 検出されない |
塩化物イオン | 異常なし |
蒸発残留物 | 異常なし |
陰イオン界面活性剤 | 検出されない |
非イオン界面活性剤 | 検出されない |
フェノール類 | 検出されない |
分析項目 | 試験結果 |
有機物(全有機炭素(TOC)の量) | 0.3(基準値0.5 mg/L) |
味 | 測定不能 |
臭気 | 異常なし |
色度 | 異常なし |
濁度 | 異常なし |
エピクロロヒドリン | 検出されない |
アミン類 | 検出されない |
1.4-トルエンジアミン | 検出されない |
1.6トルエンジアミン | 検出されない |
酢酸ビニル | 検出されない |
スチレン | 検出されない |
1.2-ブタジエン | 検出されない |
1.3-ブタジエン | 検出されない |
N.N-ジメチルアニン | 検出されない |
【STTG材の各薬品での影響の評価】
薬品名 | 結果 |
水道水 | 異常なし |
海水 | 異常なし |
塩化ナトリウム | 異常なし |
苛性ソーダ | 異常なし |
塩化カリウム | 異常なし |
塩化カルシウム | 異常なし |
アンモニア水 | 異常なし |
セメント飽和水 | 異常なし |
酢酸 | 異常なし |
A重油 | やや不良 |
10%硫酸 | やや不良 |
10%塩酸 | やや不良 |
※アルファーゾルSTTG防水膜を各薬品、溶剤に20℃にて7日間含浸後に測定
【STTG工法標準歩掛】
施工単位 | 5m(止水量工目地長さ)/1日 | |
実働時間 | 8時間(昼休み1時間含む) | |
材料使用量 | アルファー・ゾル‐STTG | 15.0kg |
アルファー・ゾル‐ゲル化剤 | 0.8kg | |
硬化促進剤(ハイセルOH1-X) | 1.7kg | |
注入ピン | 25.0本 | |
撹拌翼 | 2.0本 | |
チャックノズル | 2.0本 | |
ドリルビット | 1.0本 | |
潤滑油(STTG用) | 1.0kg | |
人工 | 止水技士 | 1人 |
止水工 | 1人 | |
一般作業員 | 2人 | |
使用機械 | 電動ドリル | 1台 |
Y字注入装置 | 1台 | |
攪拌機 | 1台 | |
注入ポンプ | 2台 | |
管理要員 | STTG管理技術者 | 1人 |
【止水延長当たりの構造物の相違による材料注入量】
施工場所 | 品目 | 歩掛り |
地下トンネル 電力洞道漏水(中)漏水(大) | アルファー・ゾル‐STTG | 3.00㎏/m |
アルファー・ゾル‐ゲル化剤 | 0.15㎏/m | |
硬化促進剤(ハイセルOH1-X) | 0.33㎏/m | |
注入ピン | 5本/m | |
地下構造物(建 物) エフロレッセンス | アルファー・ゾル‐STTG | 1.00㎏/m |
アルファー・ゾル‐ゲル化剤 | 0.05㎏/m | |
硬化促進剤(ハイセルOH1-X) | 0.11㎏/m | |
注入ピン | 3本/m | |
地下構造物(建 物)漏水(小)※滲み程度 | アルファー・ゾル‐STTG | 1.00㎏/m |
アルファー・ゾル‐ゲル化剤 | 0.05㎏/m | |
硬化促進剤(ハイセルOH1-X) | 0.11㎏/m | |
注入ピン | 5本/m | |
地下構造物(建 物)漏水(中)※滴下程度 | アルファー・ゾル‐STTG | 1.50㎏/m |
アルファー・ゾル‐ゲル化剤 | 0.08㎏/m | |
硬化促進剤(ハイセルOH1-X) | 0.17㎏/m | |
注入ピン | 5本/m |
※標準歩掛りは一般的な躯体状況や漏水量を想定しており、設計に適用する際は、現場確認による詳細な調査をする。
【機器構成】
石油樹脂・アクリル樹脂系材料(商品名:アルファー・ゾル‐STTGとアルファー・ゾル‐ゲル化剤)を主材とし、現場において硬化促進剤である親水性ウレタンプレポリマー(商品名:ハイセルOH-1X)と混合して漏水部へ注入することで、 STTG材と硬化促進剤をそれぞれの専用ポンプで混合割合を制御しながら別々に圧送 し、注入直前に攪拌混合し、あらかじめ設置した注入ピンを介して注入対象部位に注入するものである。
※石油樹脂・アクリル樹脂系材料のアルファーゾル・STTGと硬化促進剤のウレタンプレポリマーをそれぞれ専用ポンプで圧送すると、混合割合を制御 しながら注入直前に撹拌混合することで、材料の硬化時間(ゲルタイム)を適 切に早める。
注入ピンの設置標準と注入設備概要を示す。
- コンクリート面のひび割れ等に対し等間隔となるようにドリルで注入孔を空けて注入ビンを設置する。
- 注入装置より、Y字混合機のノズルを注入ビンに差し込み、STTG材と硬化促進剤を同時に注入する。
【材料配合】
材料 | 比率 (重量比) |
配合例 | |
主 材 | アルファー・ゾル‐STTG | 100% | 4.0kg |
アルファー・ゾル‐ゲル化剤 | 3~5% | 0.2kg | |
水 | 5% | 0.2kg | |
硬化促進剤 | ハイセルOH-1X | 主材に対し5%~10% | 主材4.4kg(STTG4㎏+ゲル化剤0.2㎏+水0.2㎏)に対して、ハイセルOH-1X 0.35kg(主材に対し8%の場合) |
【注入孔削孔】
- 漏水の発生している目地やひび割れに対して直径10㎜の孔を、漏水原因の水みちと交差するように削孔する。削孔角度は目地やひび割れに対して入角30度程度とする。
- 削孔間隔、削孔深さはコンクリート躯体の形状、厚さ等で個別に検討する必要があるが、概ね削孔間隔・削孔深さ共にコンクリート躯体厚さの2/3程度を標準とする。
- 削孔は、ひび割れに対して左右に千鳥に行うことを基本とするが、打ち継ぎ目や現場状況に より千鳥削孔ができない場合は、個別に検討する。
- 削孔時に発生した切り粉はエアーブロー又は水洗いにて念入りに除去する。
【注入ピン取付け】
- 削孔した穴に注入用ピン(注入用高圧パッカー)を取り付け、回転により締め付ける。
【STTG材注入】
- 取り付けた注入ピンにSTTG用Y字ノズルをセットし、主材(アルファー・ゾル‐STTGとアルファー・ゾル‐ゲル化剤および水)と硬化促進剤(親水性ウレタンプレポリマー )を別々の系統でポンプ圧送し、STTG用Y字ノズル先端で攪拌混合しながら注入する。
- 主材に対し硬化促進剤の配合率(重量比)が5%~10%の範囲で混合できるよう、予め硬 化促進剤注入ポンプに備えた流量調節装置を調整する。
- 冬季の施工では主材の温度が20℃を下回らないよう、ウォーマー等を用いて加温する。
- 注入は、クラックからの材料のリーク状況や注入圧力の状況、漏水の減少具合等を確認しながら行う。
【注入機械】
名称 | 購入先 |
アルファーゾル・STTG アルファーゾル・ゲル化剤 |
|
ハイセルOH-1X 潤滑油 |
|
注入ポンプ 高圧ホース Y字注入装置 撹拌翼 変圧器 注入ピン 攪拌機 |
|
缶ウォーマー |
|
【個別検討が必要な事例】
建物等、躯体厚が450㎜を超える場合
- 孔間隔削および削孔深さを洞道と同じ2/3Hにすると、削孔間隔が広すぎる等の原因 により、クラックへの止水剤の充填が不十分になることから、個別に検討する。
躯体裏への材料の流出を少なくする場合
- 止水剤を注入する躯体の裏面への材料流出を少なくする必要がある場合は、個別に削孔長の検討をする。
※シールド洞道のセグメントの継ぎ目を止水する場合
シールド洞道においてリング間等、セグメントの継ぎ目を止水する場合は、通常どおり の削孔では、鉄筋に当たり施工が困難な場合が多いため、削孔方法について個別に検討する。
【注入材料の取り扱い】
注入材料の安全データシート(SDS)の概要は下記の通りである。
工種名:注入工
使用 材料名 |
政令 番号 |
対象となる 化学物質名 |
危険有害性 | リスク低減実施事項 |
アルファーゾル・STTG | - | - | - | - |
アルファー・ゾル‐ゲル化剤 | 405 | トリレンジイソアソシエート |
|
|
ハイセルOH1-X | 598 | メチレンビス(4.1シクロヘキシレン)=ジイソシアネート |
|
|
【コア採取箇所】
躯体厚 H | 削孔長 0.8H | 亀裂との離隔 0.3H | 削孔間隔 2/3H | |
天井部 | 250㎜ | 200㎜ | 75㎜ | 167㎜ |
側壁 | 250㎜ | 200㎜ | 75㎜ | 167㎜ |
MHより480m付近 | MHより500m付近 | ||||||||
コア採取箇所 | ひび割れ位置 | 天井部 | 右壁 | 天井部 | 左壁 | ||||
ひび割れ幅(㎜) | 0.1 | 0.2 | 0.1 | 0.2 | 0.1 | 0.2 | 0.1 | 0.2 | |
コア採取数量(本) | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | |
合計 8 |
【コア採取状況】
【コア採取による注入効果確認】
【ひび割れ漏水補修結果と考察】
ひび割れ漏水補修結果
コンクリート表面ひび割れ幅0.1㎜~0.2㎜のひび割れ漏水に 対してのSTTG工法による止水を確認した。
充填状況確認結果
- ひび割れ幅0.2㎜ではSTTG材の充填を確認した。 ひび割れ幅0.1㎜ではコンクリート表面より50㎜までのST TG材の充填を確認した。
- コンクリート表面ひび割れ幅0.1㎜の場合、内部のひび割れ 幅は0.1㎜以下となり、STTG材は入りにくくなるため注入時間が長くなり、注入圧力も高くなる。ただし、注入圧力を高く すると、注入圧力によってコンクリートが割れ、ひび割れ幅は増大する。
- ひび割れ漏水補修では、コンクリート内部のひび割れ状態(ひび割れの進行方向、貫通の有無)が不明なことから、注入ピン設 置標準(200㎜ピッチ、千鳥設置)では注入時間が長くなり、 注入圧力も高くなるため、注入ピンの設置間隔は狭くする必要がある。
考察
- コンクリート表面ひび割れ幅0.1㎜の場合、内部のひび割れ 幅は0.1㎜以下となり、STTG材は入りにくくなるため注入 時間が長くなり、注入圧力も高くなる。ただし、注入圧力を高く すると、注入圧力によってコンクリートが割れ、ひび割れ幅は増 大する。
- ひび割れ漏水補修では、コンクリート内部のひび割れ状態(ひび割れの進行方向、貫通の有無)が不明なことから、注入ピン設置標準(200㎜ピッチ、千鳥設置)では注入時間が長くなり、注入圧力も高くなるため、注入ピンの設置間隔は狭くする必要がある。
【漏水延長の拡大の理由】
- コンクリート打継ぎ目
打継ぎ目全体が一体化の不足等により弱点となっているので、漏水箇所を止めた場合、打継ぎ目に沿って漏水が移行する可能性が高い。 - コンクリートの目地
目地材の経年劣化、目地近傍の一体化の不足などにより漏水箇所を止水 した場合、目地に沿って漏水が移行したり、近傍の目地に移行する可能性が大きい。 - 新たにコンクリート躯体に発生した亀裂
引張力、せん断力によるものであり、亀裂の延長線上はコン クリート耐力以上の力を受けた可能性が高く、漏水箇所を止水した場合、亀裂の延長線上に新たに漏水が移行する可能性が大きい。
【具体的な設計数量の着眼点】
- コンクリート打継ぎ目の場合
- 小規模円形トンネルでは、漏水延長が全周の1/4程度でも施工状況を勘案して設計数量として半断面、全断面を設計数量とする。
- ボックスカルバート及びマンホールなどの場合、施工継ぎ目の一部が漏水しても施工継手端までを設計数量とする。
- 断面が変化する付近での漏水延長、止水設計長を断面変化部までを設計数量とする。
- 供用中に発生するひび割れの場合
- 現状での漏水延長の周囲のコンクリート状況を確認し、微細ひび割れが集中している範囲を設計数量とする。
【注入圧力の管理】
注入圧力の上限は、コンクリートの強度を考慮して30MPaとする。圧力と注入の継続、中止の考え方に以下の通りを基本とする。
- 出口圧力が上限に達し、そのままポンプを稼動せず保持しても、圧力が下がらな いケース
注入孔がクラックに達していないか、または既に別の注入孔から材料が迂回充填され、これ以上材料が入らないケースのため、その注入孔からの注入は継続しないで良い。次の注入孔に移行する。 - 出口圧力が上限に達し、そのままポンプを稼動せず保持すると圧力が徐々に低下し、やがて注入の継続が可能となるケース(標準)
止水剤のリークが表面に見られない場合は、一 度下がった圧が上限に立ち上がるまで、断続的または継続的に注入する。 止水剤のリークが表面に見られる場合は、リークする止水剤の量と注入量が同等程度 になるまで注入する。ただし、クラックが大きい等により、止水剤のリークのほかに漏水がみられる場合は、他の注入孔からの注入や急結セメントモルタルでクラックを仮埋めする等の対策を行う。 - はじめから圧力が立ち上がらず注入量のみ増加するケース
クラックの空隙が大きい場合である。漏水が止まらない場合は、基本的には注入を継続して良いが、長時間注入圧力が上がらない場合は、裏側空洞等に材料が逸脱していると考えられるため、一旦注入を中止し漏水状況の変化を確認する。
【試験方法】
- 水圧試験は、クラック等からの漏水を想定し、幅0.2㎜・0.5㎜・1.0㎜の隙間を設けた試験体に各止水材を充填し、水圧0.1MP~0.5MP昇圧させ、また、0.1MP毎に30分ずつ保持し止水材の漏水を目視で確認した。
- 試験において確認する水圧については、地下水位以 下50mまでの構造物が受ける水圧を考慮し0.5MPまでを最大値とした。試験回数は試験体毎に1回ずつとし水圧試験を実施した。
【試験ケース・試験手順】
試験材料 | 試験内容 | 試験回数 | |
試験 | 幅0.2㎜ 幅0.5㎜ 幅1.0㎜ | 水圧(MP) 0.1→0.2→0.3→0.4→0.5 水圧は30分毎に保持させ昇圧する |
各1回 |
止 水 剤 | 試験配合 | |
試験 | B剤:水溶性ポロイソシアネート C剤:水 硬化促進剤:ウレタンポリマーポリイソシネート 配合(主材)A:B:C=1:0.05:0.05 硬化促進剤 主材に対し5~10% |
100☓100☓400㎜のコンクリートブロック2個に0.2㎜、0.5㎜、1.0㎜厚の板を挟んで止水 剤充填の隙間を設ける。
コンクリートブロック同志の端部を接着剤で固定した後、スペーサーを除去して、止水剤を充填する。
加圧治具を設置し加圧容器内に水を注水する。コンプレッサーで所定の圧力を掛ける。
【試験結果】
試験材料 | 試験項目 | 結果 | |||||
隙間 | 水圧(MP) | ||||||
0.1 | 0.2 | 0.3 | 0.4 | 0.5 | |||
試験剤C:- | 幅0.2㎜ | OK | OK | OK | OK | OK | 0.5MP以上 |
幅0.5㎜ | OK | OK | OK | OK | OK | 0.5MP以上 | |
幅1.0㎜ | OK | OK | OK | OK | OK | 0.5MP以上 |
※「OK」は加圧中に漏水が無かったものを示す。
【課題と目標】
- 地下鉄の試験注入では、1時間程度の短時間施工のため、注入材料が水道深く(多漏水)まで充填できなかった(短時間による充填不備)。
- 水力発電設備では、低温のコンクリート本体に注入材料の硬化熱が急激に奪われるため、短時間で硬化できなかった(温度低下による硬化不備)。
【目標】短期施工時間並びに低温環境下で硬化できる速効型材料の開発
【新規硬化材の検討方法】
- 現状のSTTG工法の硬化促進材は、ウレタン材料が主材の水分を吸収することにより硬化促進させるものである。新たに市場調査を行って、目標を満足する主材と相性の良い硬化促進材を机上で調査・検討した。
- 市場調査により選定した新規硬化材について、混合率と材料温度を変化させて、品質性能が確保できるか、材料試験並びに力学試験等で確認した。
∴市場調査結果:相性の良い材料として下記の3種類を選定すると共に、既存材料も含めて4種類について、混合率を5%~50%に変化させながら材料試験(ゲルタイム・膨張率)を実施
【既存1種類】OH-1X
【新規3種類】硬化剤A・硬化剤B ・硬化剤C
更に、上位2種類については、混合率5%から15%でゲルタイムや力学試験等を実施して使用材料を決定
【要求性能】
- 確認する要求性能は、従来の引張強度・付着強度・膨張率等の値を十分に満足すると共に、ゲルタイムを従来の1/2程度に早めることを要求性能とする。
【要求性能】:ゲルタイム(10分程度→5分以内)
試験概要は下記の通りである。
試験名 | 引張特性試験 | 付着強度試験 | 硬化混合試験 |
試験項目 |
|
|
|
主材 |
|
||
硬化促進剤 | ハイセルOH-1X(親水性ウレタンプレポリマー) | ||
試験条件 |
|
||
試験方法 | JISK7161 「プラスチック引張特性の試験方法」による | 建研式付着試験機による剥離応力測定 | 容器に試料を入れて逆向きに流れ落ちなくなる時 の経過時間、発泡状態の観察 |
特記事項 | 1データは5供試体の平均値 | 1データは1回計測値 |
【材料試験方法】
4種類の材料の混合比率と材料温度を変化させて品質要求を確認。
- 材料名:(既存)OH-1X・(新規)硬化剤A・硬化剤B・硬化剤Cの4種類
- 混合率:主材アルファーゾル100%に対して5%・10%・15%・20 %・30 %・50 % を混合
- 材料温度:主材アルファーゾルの材料温度を10℃・20℃・30℃に設定
- ゲルタイム:通常の施工時のゲルタイム8から12分に対して、1/2程度の5分以内を目標
- 膨張率:130%以下
【試験結果】
ゲルタイム並びに膨張率の品質要求に満足した硬化材は下記の通り
主材温度20℃
- OH-1X15% と硬化剤B 10%
主材温度30℃
- 硬化剤B 10%
硬化剤 | 混合率 | ゲルタイム | 膨張率 |
OH-1X (原材料) |
5% | 16分00秒 | 1.00 |
10% | 10分00秒 | 1.22 | |
15% | 7分00秒 | 1.56 | |
20% | 2分38秒 | 1.38 | |
30% | 33秒 | 1.71 | |
50% | ND | - | |
硬化剤A (新規材料) |
5% | 40分20秒 | 1.00 |
10% | 23分20秒 | 1.00 | |
15% | 17分30秒 | 1.01 | |
20% | 13分30秒 | 1.11 | |
30% | 50秒 | 1.31 | |
50% | ND | - | |
硬化剤B (新規材料) |
5% | 15分00秒 | 1.00 |
10% | 7分00秒 | 1.15 | |
15% | 3分36秒 | 1.46 | |
20% | 2分20秒 | 1.70 | |
30% | 2分00秒 | 2.09 | |
50% | ND | - | |
硬化剤C (新規材料) |
5% | 30分50秒 | 1.00 |
10% | 16分30秒 | 1.00 | |
15% | 10分20秒 | 1.06 | |
20% | 9分5秒 | 1.38 | |
30% | 2分40秒 | 1.59 | |
50% | ND | - |
硬化剤 | 混合率 | ゲルタイム | 膨張率 |
OH-1X (原材料) |
5% | 12分00秒 | 1.00 |
10% | 8分00秒 | 1.14 | |
15% | 5分00秒 | 1.29 | |
20% | 38秒 | 1.45 | |
30% | ND | 1.75 | |
50% | ND | 1.88 | |
硬化剤A (新規材料) |
5% | 28分40秒 | 1.00 |
10% | 13分30秒 | 1.00 | |
15% | 10分30秒 | 1.02 | |
20% | 8分20秒 | 1.14 | |
30% | 6分00秒 | 1.37 | |
50% | ND | 1.77 | |
硬化剤B (新規材料) |
5% | 13分21秒 | 1.00 |
10% | 3分55秒 | 1.16 | |
15% | 1分48秒 | 1.54 | |
20% | 1分22秒 | 1.67 | |
30% | 1分3秒 | 1.89 | |
50% | 42秒 | 2.07 | |
硬化剤C (新規材料) |
5% | 28分00秒 | 1.00 |
10% | 13分30秒 | 1.00 | |
15% | 10分00秒 | 1.08 | |
20% | ND | 1.41 | |
30% | ND | - | |
50% | ND | - |
硬化剤 | 混合率 | ゲルタイム | 膨張率 |
OH-1X (原材料) |
5% | 12分00秒 | 1.00 |
10% | 7分00秒 | 1.22 | |
15% | 2分00秒 | 1.67 | |
20% | 1分40秒 | 1.61 | |
30% | ND | 1.61 | |
50% | ND | 1.90 | |
硬化剤A (新規材料) |
5% | 21分2秒 | 1.00 |
10% | 12分36秒 | 1.00 | |
15% | 7分15秒 | 1.01 | |
20% | ND | - | |
30% | ND | - | |
50% | ND | - | |
硬化剤B (新規材料) |
5% | 6分00秒 | 1.00 |
10% | 2分42秒 | 1.18 | |
15% | 1分10秒 | 1.56 | |
20% | 50秒 | 1.84 | |
30% | ND | 1.88 | |
50% | ND | - | |
硬化剤C (新規材料) |
5% | 16分50秒 | 1.00 |
10% | 7分32秒 | 1.00 | |
15% | 10分35秒 | 1.03 | |
20% | ND | - | |
30% | ND | - | |
50% | ND | - |
【力学試験方法】
- 材料試験でゲルタイムと膨張率で品質要求性能を満足した下記2種類の材料について力学試験を実施
- 材料名:既存 OH-1X(比重1.18・粘度20℃700mPas・硬化時間20℃120秒)
新 規:硬化剤B (比重1.10・粘度23℃2,100mPas・硬化時間23℃50秒) - 混合率:主材アルファーゾル100 %に対して5%・10%・15% を混合
- 材料温度:主材アルファーゾルの材料温度を20℃に設定
【試験結果】
性能項目 | 要求品質 | 硬化促進剤 | 5% | 10% | 15% |
ゲルタイム(分) | ≦5分 | OH-1X | 12 | 8 | 5 |
硬化剤B | 14 | 4 | 2 | ||
膨張率(%) | ≦130% | OH-1X | 100 | 114 | 129 |
硬化剤B | 100 | 116 | 154 | ||
引張強度(N/㎜²) | 0.5N/㎜²≦ | OH-1X | 0.75 | 0.85 | 0.97 |
硬化剤B | 2.37 | 2.56 | 2.76 | ||
伸び率(%) | 200%≦ | OH-1X | 420 | 290 | 250 |
硬化剤B | 170 | 220 | 300 | ||
付着強度(N/㎜²) | 0.5N/㎜²≦ | OH-1X | 0.84 | 0.89 | 1.09 |
硬化剤B | 1.73 | 1.55 | 1.47 |
【試験詳細結果】2種類の品質要求性能と材料試験・力学試験の結果を下記に示す
【要求性能】ゲルタイム(5分以内)・膨張率(130%以下)
ゲルタイム試験結果(性能項目:ゲルタイム(分))
性能項目 | 要求品質 | 5% | 10% | 15% |
≦5分 | OH-1X | 12 | 8 | 5 |
硬化剤B | 14 | 4 | 2 |
引張強度試験結果(性能項目:引張強度(N/㎜²)
性能項目 | 要求品質 | 5% | 10% | 15% |
0.5N/㎜²≦ | OH-1X | 0.75 | 0.85 | 0.97 |
硬化剤B | 2.37 | 2.56 | 2.76 |
【要求性能】付着強度(0.5N/㎜2)・膨張率(130%以下)
付着強度試験結果(性能項目:付着強度(N/㎜²))
性能項目 | 要求品質 | 5% | 10% | 15% |
0.5N/㎜²≦ | OH-1X | 0.84 | 0.89 | 1.09 |
硬化剤B | 1.73 | 1.55 | 1.47 |
膨張率(性能項目:膨張率(%))
性能項目 | 要求品質 | 5% | 10% | 15% |
0.5N/㎜²≦ | OH-1X | 100 | 114 | 129 |
硬化剤B | 100 | 116 | 154 |
【要求性能】伸び率(200%以上)
伸び率試験結果(性能項目:伸び率(%))
性能項目 | 要求品質 | 5% | 10% | 15% |
0.5N/㎜²≦ | OH-1X | 420 | 290 | 250 |
硬化剤B | 170 | 220 | 300 |
- ゲルタイム・引張・付着強度は、 OH-1Xよりも大幅に性能が上がった。膨張率は、同程度であった。
- 伸び率は、 OH-1Xよりも一部若干性能が下がったが、要求性能200%以下は確保できる。
∴硬化促進材10%程度で採用すれば,速効型として十分な性能を持っていると判断できる
【凍結融解試験の概要】
- STTG材を寒冷地におけるコンクリート(例えばダム堤体)の漏水補修材として用いる場合を想定し、凍結融解抵抗性を把握したものである。材料の引張特性について述べる。
凍結融解試験
- 凍結融解のサイクル当たりの所要時間、凍結融解の温度設定は、コンクリート凍結融解試験JIS A 1148 に準じて実施した。
- 凍結融解の温度は、最高5℃から最低-18℃に1サイ クル3~4時間で温度を低下、上昇させた。
- 試験体の材料厚さは2㎜程度と薄いため試験片が凍結試験機内で変形し、養生条件がばらつくことが懸念 された。このためコンクリート柱 (8㎝×8㎝×40㎝)を使用し、写真の様に試験 片の上下をバンドにより固定した。また、試験体に凍 結融解を均等に与えるためにコンクリート柱から試験体を定期的に外し、試験体の裏と表を反転させた。
- 標準的な配合として硬化促進材の重量は、主材に対し5%とした。
引張試験
- 試験片は、コンクリート柱に取付けた長方形の 試験体より切り抜き、全長115㎜(標線間距離 80㎜)×幅6㎜ (引張試験JIS K 7127)として 試験速度50㎜/観minで実施した)。材料の引張試験は、凍結融解0,1,30,60,150サイクル毎に実施した。
【材料の引張強度試験結果】
材料の引張強さは、図の様に凍結融解の0~150サイクルによらず大きく変化しない結果となっ た。STTG材料中の気泡の大きさは小さく、一様に分布しているため凍結融解に伴う水分の膨張の影響は少ないと考えられた。
【凍結融解試験の概要】
- STTG材を寒冷地におけるコンクリート(例えばダム堤体)の漏水補修材として用いる場合を想定し、凍結融解作用の引張特性に引続き、付着特性を把握した。
凍結融解試験 | 引張試験 |
試験機は図に示すものを凍結融解機に入れた。凍結融解の1サイクルは、60サイクルまで行った。その他条件は引張試験と同様とした。 | 材料の付着強度試験は図の様に、モルタル板上部に吊上げ金具を固定してJISK5600に準し、1,30,60サイクル毎に実施した。 |
【材料の付着強度試験結果】
コンクリート提体の温度主出力位置(右)
材料の付着強度は、図の様に凍結融解の0~60 サイクルでは、最大強度を示す1サイクル目と最小 強度を示す60サイクル目の間では20%程度の強度 低下が発生した。しかし、いずれも要求性能(水深 50m相当の0.5N/㎜²)以上であった。
このこと から、現場における60サイクルに相当する耐用年数を温度解析により検討した。
[温度解析]
- この耐用年数を検討するために、長野県内のAダムの構造をモデル化し、日本コンクリート工学会の 解析ソフト「JCMAC3」により堤体のコンクリー ト温度分布を解析した。
- 解析モデル
ダム堤体の厚さ方向10㎝ピッチのコンクリー ト温度の経時変化の解析モデルを図とした。なお、前面(赤の部分)は熱伝達境界、他の5面(図中 青の部分)は断熱境界としている。熱伝達境界は 外気との熱伝達が存在する境界、断熱境界は温度 勾配が0の境界である。 - 評価
温度は冬季期間では0℃線の交差は1回程度となることから、60サイクルに相当する耐用年数は60年と考えられる。
以上よりダム堤体に関して、凍結融解60 サイクルは60年程度と考えられることから、付着強度の低下は実用上問題ないと考えられる。
【凍結融解を受けたSTTG材の性状】
凍結融解サイクルを与えた試験体を電子顕微鏡にて最高500倍で撮影した。この結果、写真の様に凍結融解サイクルを受けても性状には変化は見られず、凍結融解の影響は少ないと考えた。
電子顕微鏡写真
【試験方法】
海水の平均塩分濃度が3.5%程度のことから、下記の順、配合で使用する希釈水に塩分を含有して 配合実験を行い、ゲルタイムや粘度などの基本数値の相違の有無を確認する。
- 試験ケース
- 材料の比率は主剤(STTG)100に対して、ゲル化剤5、希釈水5、硬化促進剤(OH-1X)5とする。
※塩分濃度は水量に対して0% 2% 3.5%の3ケース
- 材料の比率は主剤(STTG)100に対して、ゲル化剤5、希釈水5、硬化促進剤(OH-1X)5とする。
- 試験方法
- 練り混ぜは、はじめにゲル化剤を同量の水または塩水で希釈、撹拌し、主剤に加えて30秒間ハンドミキサーで練り混ぜる。
- 次に、硬化促進剤(OH-1X)を加え20秒間ハンドミキサーで練り混ぜる。
- 練り混ぜた材料を自然状態で保持し、デジタル粘度計で5分毎に粘度を測定し判定不能になるまで数値測定し、各3ケースの数値を比較する。
- 硬化体サンプルはその後の経過観察を行うため1年間保管し、1か月ごとに目視で確認する。
【試験結果】
STTG通常配合比 | STTG:ゲル化剤:希釈水:硬化促進剤(OH-1X) 100 : 5 : 5 : 5 |
||
希釈水の塩分含有量 | 0% | 2% | 3.5% |
主剤単体 | 1860 | ||
混合撹拌直後 | 4820 | 4640 | 5220 |
5分 | 10440 | 13120 | 13180 |
10分 | 35290 | 34810 | 35260 |
15分 | 75600 | 72900 | 83360 |
20分 | ND | ND | ND |
今回の実験では、塩分濃度の違いによる粘性の変化はみられないことから、海水がSTT材Gに与える影響は無いといえる。
【せん断特性】
せん断強度試験の結果を表に示す。また、せん断応力と変位との関係を図に示す。本試験結果から、 STTG工法硬化体のせん断特性は、幅1mの部材を貫通するひび割れをSTTG工法により補修を行うこと で、水圧0.53MPaまで耐えることができると推定される。
気中養生:1.26N/ ㎜²
湿潤養生:0.53N/ ㎜²
試験体名 | 最大荷重 | せん断強度 | 最大変位 | |
(kN) | (N/㎜²) | 平均 | (㎜) | |
DC-1 | 29.9 | 1.48 | 1.26 | 1.52 |
DC-2 | 22.2 | 1.10 | 1.90 | |
DC-3 | 24.0 | 1.19 | 1.61 | |
WC-1 | 6.96 | 0.35 | 0.53 | 1.10 |
WC-2 | 14.0 | 0.69 | 0.880 | |
WC-3 | 11.1 | 0.55 | 1.88 |
【付着特性】
付着特性試験結果を、図に示す。試験結果から、STTG工法硬化体の付着特性は、以下の様に推定される。
気中養生:0.96N/㎜²
湿潤養生:0.36N/㎜²
最大荷重 | 付着強度 | 最大変位 | |||
(kN) | (N/㎜²) | 平均 | 平均※ | (㎜) | |
ADC-1 | 1.55 | 0.97 | 0.92 | 0.96 | 0.43 |
ADC-2 | 1.71 | 1.07 | 0.39 | ||
ADC-3 | 1.33 | 0.83 | 0.39 | ||
ADC-4 | 1.80 | 1.13 | 0.42 | ||
ADC-5 | 0.98 | 0.61 | 0.37 | ||
AWC-1 | 0.63 | 0.39 | 0.36 | 0.36 | 0.13 |
AWC-2 | 0.69 | 0.43 | 0.28 | ||
AWC-3 | 0.51 | 0.32 | 0.19 | ||
AWC-4 | 0.47 | 0.29 | 0.13 | ||
AWC-5 | 0.60 | 0.38 | 0.16 |
工法名 |
石油樹脂。アクリル系樹脂系 高圧注入工法 (STTG工法) |
アクリル系高圧注入工法 | ウレタン系高注入工法 |
工法概略 |
伸びや付着性に優れる石油樹脂・アクリル系止水材料に親水性ウレタンポリマーを混合し、主材のゲルタイムを要求性能の範囲に早めた。 |
極めて低粘度の親水性高弾性樹脂を高圧で注入し、硬化樹脂の弾性反発と給水樹脂によりひび割れを閉塞する。 | ポリイソシアネートが水と接触し、所定の時間経過後に従い、順次反応を始め、最終的に全量がゲル化する。このゲルはほとんど分散材を含んでいない。 |
主成分 |
アクリル樹脂・石油樹脂親水性 ウレタンポリマー |
二成計合成樹脂 | ポリイソシアネート化合物 |
充填性 | 微細クラックへの対応も可能 | 微細クラックへの対応も可能 | 微細クラックへの対応も可能 |
変位追従性 | 伸び、付着性に優れ、追随性が高い | 高弾性のため伸縮性に対する追随性が高い | 伸びや付着性がないため、追随性は低い |
耐久性 | 経年変化はほとんどない | 経年変化はほとんどない | 伸縮する目地等には追随できない |